男性不妊の7割以上は、原因が見当たらないけれども精子の数が少なかったり、精子の運動性能が悪かったりするというケースです。そのようなケースの多くで「酸化ストレス」が関与しているといわれています。

■酸化ストレスとは酸化力と抗酸化力のバランスが酸化力のほうに傾いた状態

酸化とは、たとえば、リンゴを切ったままにしておくと色が変わったり、鉄が錆びついたり、 油が古くなると黒ずんだりするといった、空気中の酸素に触れ、反応することで起こる現象のことです。体内で発生する「活性酸素」は、体(細胞)を酸化させ(さびつかせ)、さまざまな不調や病気の原因になります。酸化の犯人は活性酸素です。

その一方で、私たちの体内には活性酸素を無毒化する働き(抗酸化作用)が備わっています。その中心は抗酸化酵素です。また、ビタミンCやE、グルタチオン、コエンザイムQ10、ポリフェノールなどの抗酸化物質があります。

通常、酸化力と抗酸化力はバランスがとれています。ところが下図のように、活性酸素が過剰に発生(左側)したり、もしくは、抗酸化力が低下(右側)したりして、酸化力が抗酸化力を上回った状態を「酸化ストレス」と言います。つまり、酸化力と抗酸化力のバランスが酸化力のほうに傾いた状態が「酸化ストレス」なのです。

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■男性不妊の背景にある酸化ストレス

活性酸素の発生源は多岐に渡ります。そもそも、細胞内のミトコンドリアでエネルギーをつくる際に発生しています。その他、タバコや大量の飲酒、肥満、高血糖、偏った食生活、食品添加物などの生活面、また、精索静脈瘤、前立腺などの炎症、異常な精子からも活性酸素が大量に発生します。さらには、禁欲期間が長くなると酸化ストレスを受けやすくなります。

以下の図(*)は男性不妊と酸化ストレスの関係です。

スライド1
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酸化ストレス状態、すなわち、活性酸素が過剰になって酸化力が抗酸化力を上回ると、精子の頭部に格納されているDNAを傷つけたり、体部や尾部の細胞膜の脂質を酸化したりします。活性酸素はDNAの二重らせんをちぎってしまいます。また、精子には抗酸化酵素が十分に備わっていなかったり、細胞膜の脂質は主に多価飽和脂肪酸で酸化されやすい性質があるからです。

つまり、そもそも、精子は酸化ストレスを受けやすい細胞なのです。

そして、DNAが傷つけられるとDNA損傷率が高くなり、受精率が低下したり、流産率が高くなったりします。また、細胞膜の脂質の酸化は細胞膜の柔軟性を低下させ、精子細胞のタンパク質の酸化もあわさって運動性能が悪くなってしまいます。

■生活習慣の改善と抗酸化サプリメントで酸化力と抗酸化力のバランスを正常化する

酸化ストレスのダメージから精子を守り、精子の質を高め、妊娠させる力を回復させるには、酸化ストレス状態を改善すること、酸化力と抗酸化力のバランスを正常化することです。

生活習慣を見直し、活性酸素の過剰な発生を抑え、酸化力を低下させ、抗酸化サプリメントを摂取し、抗酸化力を高めることです。

また、精索静脈瘤や前立腺炎などがないか、泌尿器科医の診察を受けておくことも大切です。

*)Nutrition, Fertility, and Human Reproductive Function(CRC Press)P.236のFIGURE 11.1の図を翻訳