2012.02.11
マルチビタミンミネラルの摂取は不妊治療の妊娠率を高めるのか?
これまでサプリメントを摂ることが、妊娠する力を高めたり、不妊治療の治療成績を向上させるのかどうか、実際にヒトを対象とした試験で確かめられたことは、ほとんど、ありませんでした。ところが、Reproductive BioMedicine Onlineという生殖医学誌にイギリスのロンドン大学の大学病院で女性不妊患者を対象にしたマルチビタミンミネラルの併用効果を確かめる試験の結果が発表されました。
排卵誘発剤を使った不妊治療を受けている女性の患者58名をランダムに2つのグループに分け、一方のグループにはマルチビタミンミネラルのサプリメントを、もう一方には葉酸サプリメントを摂取してもらい、両方のグループがサプリメントを摂取してからちょうど1ヶ月後から3周期の不妊治療を実施し、治療成績を比較してます。
その結果、マルチビタミンミネラルを摂取したグループでは29組中20組が妊娠、葉酸サプリメントを摂取したグループでは27組中11組が妊娠、累積妊娠率はマルチビタミンミネラルグループでは69.0%、葉酸グループでは40.7%だったそうです。
また、マルチビタミンミネラル服用グループのほうが葉酸服用グループに比べて、少ない治療周期で妊娠に至ることができたといいます。
試験を実施したドクターは、排卵誘発剤を使った治療周期では葉酸サプリメントよりもマルチビタミンミネラルのサプリメントを摂取したほうが高い妊娠率が得られ、マルチビタミンミネラルは不妊治療の補助になり得る可能性があると結論づけています。
この結果をどのように受け止めればいいのでしょうか?
そもそも、ビタミンは、体内のあらゆる代謝がスムースにすすむのに絶対に必要な栄養素です。ミネラルには、身体を構成する成分になったり、酵素と一緒になってエネルギー産生や抗酸化作用になくてはならない働きをしています。
このようにビタミンやミネラルは人間が生きていくのに絶対に必要とされる栄養素であるにもかかわらず、体内でつくることが出来ないため、常に外から摂り入れる必要があります。
つまり、食事から摂らなければならないというわけです。
ビタミンの中には水に溶ける性質のあるものもあり、体内にためておくことができないため、食生活次第では、不足してしまう可能性が常にあります。
厚労省の調査では、30~40代の女性では、葉酸やミネラルなどの栄養素の1日の平均摂取量は、必要とされる40~60%程度しか摂れていないことがわかります。
そのため、今回の試験で、マルチビタミンミネラルを摂取することで不妊治療において良好な妊娠率が得られたとすれば、現代の食生活ではビタミンやミネラルが生殖機能が正常に働きために十分な量が摂れていないということが言えると思います。
妊娠や出産は特別な身体の働きによるものではなく、本来的に備わった当たり前な機能です。
妊娠する力を高めるために、特別な栄養素を摂る必要はありません。
5大栄養素を過不足な摂るために、バランスのよい食生活を心がけ、そして、不足しがちなビタミンやミネラルをマルチビタミンミネラルのサプリメントで補うこと、これが基本です。