今年の6月にNHKで放映された番組、「NHKスペシャル あなたの寿命は延ばせる 発見!長寿遺伝子」をご覧になった方もいらっしゃると思います。

内容はと言うと、その扇動的なタイトルそのままです。

私たち、人間の寿命は、「サーチュイン」という長寿遺伝子によるところが大きく、「レスベラトロール」というブドウの皮に豊富に含まれているポリフェノールを摂れば、サーチュインが活性化され、長生きできるだろうというものでした。

ところが、このサーチュインという遺伝子群には長寿効果があるのかどうか、怪しいとの論文が昨日のNatureで発表されました

そもそも、普段の食事のカロリーを約70%に制限すると、寿命が延びることがわかっています。

人間で実験するのは困難ですが、20年間に渡るアカゲザルを使った実験で実証され、おそらく人間にも当てはまるだろうと考えられているからです。

昔から、腹八分目が健康で長生きする秘訣であるとの言い伝えが本当であることが確かめられたとも言えます。

では、カロリー制限するとなぜ長生きできるのか、そのメカニズムを突き止めたとされていたのが、アメリカのハーバード大学の先生でした。

サーチュインという長寿遺伝子です。

カロリー制限すると、サーチュインが活性化され、寿命が延びると考え、線虫やハエなどを使った実験で確かめたとされていました。

さらには、同じ研究グループで、レスベラトロールは、カロリー制限しなくても、サーチュインが活性化され、長生きできることを確かめたと発表したのです。

この発見が世に相当なインパクトを与えたわけです。

なぜなら、カロリー制限しなくても、レスベラトロールを飲めば、長生きできる、すなわち、”楽して長生きできる”可能性が示されたからです。

実際に研究者は、そんな魔法のような薬を開発すべく、ベンチャー企業を立ち上げ、早々と株式を公開し、ひと財産築いていますし、レスベラトロールのサプリメントは爆発的に売れるようになりました。

ただし、本当に、レスベラトロールがカロリー制限しなくても長生きできるのかどうかは分からないままに、全ては、思惑が先行してのことです。

そして、NHKまでが、前述の番組を放映したものですから、日本でもレスベラトロールのサプリメントが大変な勢いで売れるようになったというわけです。

そこに、昨日の論文です。

長寿遺伝子であると考えられていたサーチュインに、そんな効果なんかないと。

まさに、この何年かのサーチュインフィーバーとの言えるブームに冷水を浴びせたわけです。

もちろん、本当のところは私たちには知る由もありません。

寿命を決定するメカニズムは複雑で、こうすれば長生きできる!なんて簡単なメカニズムではないことは確かです。

そもそも、”楽して(好きなだけ食べて)長生きしたい”ということを求めること、そのものが間違っているのかもしれません。

いずれにしても、今後の研究動向に注目したいと思います。

最後に誤解のないように書いておきますが、だからといって、レスベラトロールを摂ることは何の意味もないわけではありません。

レスベラトロールで、カロリー制限しなくても、長生きできるかどうかは分からないわけですが、抗酸化作用や抗炎症作用があり、さまざまな代謝に深くかかわり、老化を制御していることは間違いありません。

うまく利用したい栄養素ではあります。