アドバイザリードクターに聞く 開発秘話インタビュー

女性不妊や男性不妊を専門とするドクターのアドバイスのもとに企画開発しています。

育む力を養いたい~健康な赤ちゃんを授かるために、私たちに出来ること

私たちは、これまで、不妊治療を繰り返している女性から、「治療効果が実感できない」とか、「妊娠に近づいている感が持てない」、そんな悩ましい思いを打ち明けられたことが、度々、あります。

妊娠は、ある意味、“確率論”であり、仕方ないところもあるものの、それでは、ただただ、ひたすら祈りながら、治療を繰り返すしかないかと言えば、決して、そんなことはありません。

要するに、妊娠する力が低下する原因は、たとえば、年齢による卵子の老化のようにどうしようもないことだけでなく、どうにかできることもあるからです。

その一方で、ネット上では、“こうすれば授かる”と思わせるようなキャッチフレーズで、さまざまな商品やサービスが出回っています。

限られた時間やお金を有効につかい、後々、後悔しないためにも、正しい情報に接することが大切です。

京都の志馬クリニック四条烏丸は、”妊娠は心身の健康の延長線上にある、身体の働きの一つ”との考えに基づき、本来、備わっている妊孕能(=育む力)を取り戻すことで妊娠を目指すという治療方針を掲げる「体内受精専門の不妊治療病院」です。

そこで、志馬千佳先生に、”健康な赤ちゃんを授かるために、私たちに出来る、本当に大切なこと”をテーマに、お話をお伺いしました。

体内受精を専門とするということ

志馬クリニック四条烏丸院長
志馬千佳先生

細川)志馬先生ご夫妻は、昨年(2012年)の5月に「体内受精を専門とする不妊治療病院」、志馬クリニック四条烏丸をご開業なさいました。まず、お聞きしたかったのは、なぜ、“体内受精専門”なのか?ということです。

志馬先生)簡単に申し上げますと、「体内で受精して妊娠するために、体内の環境を改善する努力をちゃんとしよう」という意志表示です。でも、そのことを説明するためには、体外受精とは?というお話しから始めるのがよいと思います。

細川)はい。

志馬先生)ご存じのとおり、体外受精というのは、卵子と精子を体外に採り出し、限りなく近づけることから始まります。そして、受精がおこれば、2日~5日間、培養し(人工的な環境下で育て)、成長した胚を子宮に戻して、妊娠を期待する治療法のことです。

細川)自然妊娠では女性の卵管内で進むプロセスを体外で行うということですね。

志馬先生)体外受精という技術はもとはといえば、卵管が機能していないために卵子と精子が出会えず、妊娠が望めないカップルのための治療法として開発され、その後、原因不明不妊のカップルにも適用されるようになったという経緯があります。

細川)そうですね。

志馬先生)つまり、体外受精でなにをしているのかと言えば、「卵子と精子を物理的に近づけ」、子宮内で着床する直前までの過程を代行することです。

細川)卵子と精子が確実に出会えるようにサポートすることであると。

志馬先生)ある調査では体外受精によって卵巣機能の改善や若返りが出来るかのような、そんな誤ったイメージがあると報告されていますが、体外受精は卵子と精子を近づけ、体外の成育環境を用意はするけれども、卵質の改善や受精卵の成長そのものには、なんら介入出来ているわけではありません。

細川)あくまで受精、そして、その後の成育は卵子や精子に備わっている生命力によるものであると。

志馬先生)一方、体内受精とは、「女性の体内に排出された卵子と、女性の体内に進入した精子が、女性の体内で受精すること」です。

とはいえ、実際には私たちは妊娠の時の受精方法だけを問題にしているわけではありません。つまり、体外受精を否定しているわけでも、薬や注射を出来るだけ使わず、とにかく何も手を加えないことをお勧めしているわけでもありません。実際、私たちは志馬クリニック四条烏丸を開業するまでは、大阪にあるART専門クリニックで体外受精や顕微授精などの高度生殖医療に長年携わっていましたから、その絶大な治療効果を実感してきましたし、反対にその限界も認識してきました。

細川)体内受精でなければいけないとか、自然でなければいけないと考えているわけではないと。

志馬先生)もしも、卵子と精子が出会えていないと考えられるのであれば、当然、体外受精が適用であると考えます。そのようなケースでは、反対に体内受精にこだわった結果として、貴重な時間を無駄にしてしまわないとも限りません。

細川)自然「原理主義」ではないと。

志馬先生)もちろんです。

細川)ただ、体内受精と聞くと、自然のままで、なにもしないかのような印象があります。

志馬先生)確かに誤解を受けやすい言葉ですね。冒頭にももうしあげたのですが、私たちが掲げる「体内受精専門」という治療方針は、なにもしないで妊娠を期待するというものではありません。もしも、排卵しない、排卵しづらいというようなケースでは、必要に応じて排卵誘発剤を使いますし、精子や射精に問題があれば人工授精を、卵管が詰まっているのであれば卵管鏡下卵管形成術(FT)を行い、自然妊娠を目指すことをご提案しています。

ただ、現在の不妊治療施設は体外受精専門病院になってしまっていて、体外受精になるまでのところ、つまり体内受精の段階で全力をつくして妊娠を考えましょうという医療機関がかえって少ないよう思えるのです。これには、人手や経費の問題も大きくかかわっています。

そこで私たちは体外受精という技術を切り離して、そこに至るまでの段階で、まずは徹底的に出来ることを考えたいと思ったのです。体内で受精が成立し、妊娠、出産できるようにまずは系統立てて検査を行い、治療をサポートし、体内環境も整えましょうということです。勿論、体外受精に進んでおられる方の体内環境も整えたいと思っています。

細川)なるほど。

本当に、大切なことに取り組みたい

細川)つまり、実際には受精が体内なのか体外なのかにこだわっているわけではないのだけれど、体外受精にすすむまでにもっと出来ることがあるのではないか、ということですね。

志馬先生)そうなのです。私たちが取り組みたいのは、もっとベーシックなところで、それぞれの患者さんの心や身体の状態にあわせて妊孕能を高めること、すなわち、妊娠しやすい身体づくりのお手伝い、なのです。

細川)それぞれの患者さんの心や身体の状態にあわせて、妊孕能を高めるためのサポート。

志馬先生)そうです。そもそも、体内受精でも、体外受精でも、「本来備わっているはずの妊孕能、育む力」が低下すれば、妊娠しづらくなることには変わりありません。

私たちも、必要に応じてタイミング指導や排卵を整えるホルモン療法、そして、人工授精を行います。でも、ベーシックな身体の働きとしての妊娠する力が低下している場合には、それを取り戻すことなしには、いくらさまざまな治療を繰り返しても、当然、治療効果は限定的にならざるを得ないと考えています。

細川)なるほど。

志馬先生)妊娠、出産するということは、健康の延長線上にある生命現象の一つであると考えています。
妊娠するというのは一見あたりまえのように思えますが、その過程は非常に神秘的で、奇跡の積み重ねとしか思えないことばかりです。ですから、妊娠というのは心身が健康であってこそ、なんとかその機構を維持できるものではないかと思うのです。

細川)奇跡の積み重ねですね。

志馬先生)そうです。そのために必要とされるのは、非常に基本的な心身の健康なのではないでしょうか。

細川)基本的な健康に支えられていると。

志馬先生)たとえば、生殖医療の普及に伴って、多くの研究がなされました。もちろん、生命の誕生のメカニズムについては、まだまだ、わかっていないことのほうが多いのですが、日常生活において何が妊孕能を低下させる要因については、多くの知見が蓄積されつつあります。それらをひとつずつ見てみると、どれも驚くほど基本的なことばかりです。

細川)驚くほど・・・。

志馬先生)たとえば、妊孕能を下げることとしては加齢が注目されています。そして肥満や低体重、喫煙など。逆に普段の朝、昼、夜の3食は、5大栄養素をバランスよく食べるほど、体外受精の妊娠率が高くなり、毎日、よく歩くことで血行をよくし、ストレスを解消するほうが早く妊娠に至る、早寝早起きの規則正しい生活リズムは良質の卵子を育むといった報告があります。どれも健康にとって基本的なことばかりですね。

細川)本当にそうですね。

志馬先生)例えば、特別なものを摂ったり、特別なことに取り組んだりすることで妊娠に近づくという研究報告はありません。でも実際には現代社会ではこのような規則正しい生活がしにくくなってきていますし、日々のこういった生活の積み重ねより、何か特殊な治療をさっさと受けてしまう方が簡単に思えてしまうのもわからないではありません。

細川)既に、体外受精や顕微授精を受けているカップルにも言えることですね。

志馬先生)もちろんです。実際に、昨年の開業から1年が経過し、私たちの不妊治療の方針や考え方が徐々に、知っていただけるようになったのか、ART(体外受精や顕微授精のこと)専門クリニックで、治療を受けてきた患者様が私たちのところにご相談にいらっしゃるケースが増えてきました。

たとえば、高度な治療を繰り返しても、なかなか、結果が伴わない、妊娠に近づいている感覚さえもてないことに疑問を感じて、私たちにセカンドオピニオンを求めてこられるというケースがあります。

細川)なるほど。

志馬先生)また、最近は卵子の老化が主な不妊の原因だと言われています。もちろん、卵子を若返らせることは不可能ですが、そのようなケースでも、卵巣の機能が低下している原因は、必ずしも、年齢によるものだけではありません。

であればこそ、体に備わっている妊孕能を少しでも取り戻すことが大切ではないでしょうか。

丁寧な対話と栄養療法、妊孕漢方

細川)それでは、具体的な取り組みについてお聞かせください。

志馬先生)テーマは、「食べる、動く、休む」です。

細川)食生活や運動、睡眠を最適化するというわけですね。

志馬先生)そうです。基本は「ちゃんと食べること」です。私たちは「食べて」、自分の体をつくり、活動に必要なエネルギーをつくっています。一方、新しい命、すなわち、卵子や精子、受精卵、胚、胎児は、「周囲の環境とのやりとり」で、細胞をつくり、それに必要なエネルギーをつくります。周囲との環境は「両親の体内環境(卵巣や子宮、精巣)」です。つまり、食べることで、新しい命を育む環境をつくっているというわけです。

細川)なるほど。

志馬先生)新しい生命がすこやかに成育する環境をつくる栄養素の顔ぶれは決まっていて、空気や水、そして、3大栄養素と呼ばれている、糖質やたんぱく質、脂質、さらには、それらが体内で変換され、細胞の材料やエネルギー源に変換されるのをサポートする微量栄養素と呼ばれるビタミンやミネラルです。

もしも、3大栄養素が過剰になったり、2大栄養素が不足したりすると、体(構造、酵素、ホルモン)やエネルギーがうまくつくれなくなります。また、それだけでなく、インスリンの効き目が悪化したり、高血糖、肥満、酸化ストレス増大、高ホモシステインを招き、体内環境を悪化させたりします。その結果、卵子や精子、受精卵、胚、胎児に成育に、障害になってしまうわけです。

細川)はい。

志馬先生)これが、低下した妊孕能、すなわち、育む力を取り戻すために、バランスよく食べることが基本になる根本的な理由です。そして、バランスよく食べるということは、とりもなおさず、5大栄養素を過不足なく揃えるということに他なりません。

ただ、最近はバランスよく食べることを心がけていても、食品自体の栄養素が減ってきているという報告もあり、必須の微量栄養素が不足してしまいがちです。必要に応じてサプリメントによる補充も大切なことだと考えています。ただし、サプリメントは脇役であり、チームプレーヤーであり、あくまで、主役は食べることです。

そして、適度に身体を動かすこと、運動ですね。さらに、規則正しい生活リズム、早寝早起きすること、休息です。

細川)まさに、基本的なこと、ばかりですね。

志馬先生)ただ、わかってはいるけれども、実際に実践するのは難しいとか、そもそも、なにをどうすればいいのか案外わかりにくいですよね。

細川)そうですよね。

志馬先生)食生活や運動、睡眠は、すべて生活に密着していますし生活そのものです。それぞれの患者さんの事情や都合、嗜好などもある中で、いかに改善するのかということは簡単なことではありません。

実際には努力しないと出来ないと腹をくくることから始まるのかもしれません。ですから、私たちは、まずは、患者さん一人一人と丁寧にお話しをして、正しい情報の提供につとめます。そして、患者さまがどのように進めていきたいのかをじっくり伺ったうえで、さまざまなご提案をし、患者さんに応じたサポートをしています。

細川)ここが肝心なところですね。

志馬先生)そして、本来の妊娠する力を取り戻すのに、食生活や生活習慣の見直しに加えて、漢方薬も有効であると考えています。年齢による卵巣機能の低下や、高度生殖医療の補助としても有益です。

細川)漢方薬については、クリニックで処方される場合があったり、漢方薬局があったりして、また、それぞれ処方される内容や費用も大きく違ったりして、よくわからないという方が多いようです。

志馬先生)そうですね。漢方薬についてよく誤解されていることですが、誰もが飲めば妊娠しやすくなる特効薬(漢方薬)などありませんし、誰もが同じ薬を月経周期に合わせて周期的に投与すれば妊娠しやすくなるわけでもありません。

漢方薬だからといって、効果を実感するのに必ずしも長期間の長期間の処方が必要なわけではありまません。また、妊娠するまで同じ漢方薬を漫然と飲み続ける必要もないかもしれませんし、実際には高額で続けにくいものもあります。

細川)そのようなことをよく耳にします。

志馬先生)私たちは、妊孕漢方と呼んでいますが、患者さん、一人一人の心と身体の状態にあわせて、漢方薬の組み合わせ方や他剤への変更の妙により、納得のいく処方をご提案することは、もちろんのこと、患者さまの自覚と、丁寧な四診による他覚で、「必要がなければやめる」、「効いていなければ変える」ことができます。

漢方薬は上手く使えば、身体の各臓器・各器官の調和が取れた状態を保つのに大変な効果を発揮し、妊娠をサポートすることが出来ると考えています。

細川)なるほど、そうなんですね。

志馬先生)こうして身体の健康を取り戻し、育む力を養うということは、妊娠しやすくするだけではありません。

女性は、妊娠後はお腹の中で赤ちゃんを育んでいき、出産という大仕事も待っているわけです。妊娠合併症や出産に伴うさまざまなリスクを低減することも、これまでの研究で明らかになっています。さらには、お子さんの出生後の心身の健康にも影響していることもわかってきました。

細川)その影響は長期間に渡るということですね。

志馬先生)そしてもし妊娠しなかったとしても、健康であるということはご夫婦にとって、本当はとても大切なことです。

細川)妊娠することだけがすべてではありませんものね。ありがとうございました。

■志馬千佳先生 プロフィール

志馬クリニック四条烏丸院長。1980年滋賀医科大学医学部卒業後、京都大学大学院医学研究科器官外科学講座(婦人科学産科学)、その後、静岡県立総合病院産婦人科、京都大学医学部附属病院産婦人科、医療法人越田クリニックをへて、2012年年に志馬クリニック四条烏丸を開設、現在に至る。著書に「妊娠力をつける漢方レッスン」(主婦の友社)。

志馬クリニック四条烏丸

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